相続にまつわるソボクな疑問を一挙解決!
相続は誰にでも発生するもの。ですが、相続について「右も左もわからない!」という人が多いのも事実。
ここでは、相続にまつわるあらゆる疑問にわかりやすくお答えします。
Q1
そもそも相続とは?
A1
相続(そうぞく)とは、「ある人の死亡を原因として、亡くなった人(被相続人)の財産や権利義務関係(遺産)を残された配偶者や子供ら(相続人)が包括的に承継すること」をいいます。
人が亡くなったとき、何かしらの財産をもっていて、ときには負債を抱えていることがあります。また賃貸借契約などの契約当事者になっていることもあるでしょう。このような場合、財産や負債、権利関係を引き継ぐ人がいなければ、それらは宙に浮いた状態になってしまい、関係者にとって大変不都合な状態となります。そこで法律は、相続という制度を設け、次の世代にスムーズに財産承継ができるようにしているのです。
Q2
相続人って誰になる?
A2
相続によって財産や権利義務が承継されるとしても、誰が相続人になるでしょうか?
相続人になることができるのは、基本的には法定相続人です。法定相続人とは、民法によって相続人になると定められている人のことです。
配偶者がいる場合は、いつでも相続人になります。次に子どもがいる場合には、配偶者と子どもが相続人となります(第1順位)。万が一、子どもが先に亡くなっていたら、孫がいればその地位を引き継ぎ、相続人となります(代襲相続)。子どもがいない場合は、配偶者と亡くなった人の両親が相続人となります(第2順位)。子どもも親もいない場合には、配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となります(第3順位)。こうして決められた相続人を、法定相続人と言います。
Q3
何が相続財産になるの?
A3
相続の対象になるのは、被相続人が所有していた財産的価値のある資産や負債、権利義務関係などです。
当然プラスの資産は相続の対象になります。具体的には、現金や預貯金、不動産や株券などの有価証券、投資信託、各種の積立金やゴルフ会員権などがあります。
逆にマイナスの資産、たとえば亡くなった人が借金をしていた場合には、その借金も相続の対象になりますし、未払いの家賃などの債務も相続の対象になります。また連帯保証人の地位も相続されますので、ご注意ください。
相続財産としてみなされないものもあり、墓地や墓石、仏具、神具などの祭祀関係の財産は相続財産には含まれません。
生命保険は相続財産に入らない?
生命保険は、被保険者が亡くなったときに、受取人に保険金が支払われます。この保険金は受取人固有の財産とみなされ、相続財産には含まれません。しかし、相続税評価の対象とはなりますので、相続税を試算する際には相続財産としてみなされます。ちなみに死亡退職金も同じような扱いになります。少し複雑ですが、大事なところですので覚えておきましょう!
Q4
遺産分割協議って何?
A4
相続が発生して、遺言書などがない場合、相続人全員で協議し、誰がどの財産を相続するのかを決めていきます。
この話し合いのことを遺産分割協議と言います。各相続人がもらう配分は、相続人間で自由に設定できます。1人に全部ということもできますし、全員が同じようにもらうということも可能です。しかし、1人でも合意しなければこの協議した内容は認められません。
また相続人には、法定相続分という相続人に認められた具体的な相続割合があります。
相続財産のうち、この分はもらえるという権利を法律で規定された割合のことです。この割合は、誰が相続人になるかで異なってきます。
子どもが相続人になる場合には、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもが2分の1となります。子どもが複数いる場合には、子どもの法定相続分を子どもの人数で頭割り計算されます。親が相続人になる場合には、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1となります。兄弟姉妹が相続人になる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
兄弟姉妹が複数いれば、子どものときと同じように頭数で割り振り計算します。
全く何もないとどう分ければいいか分からないため、この法定相続分を目安にし、誰がどう相続するかを決めていく人が一般的に多いかと思います。
遺産分割協議書の作り方
1.相続人の確定
2.相続財産の調査
3.遺産分割協議開始
4.遺産分割協議書作成
Q5
遺言書のことをよく聞くけど?
A5
遺言書は、亡くなった人が最後の意志を表明するための書類です。その内容は、死後の財産の分配方法などが記載されていることがほとんどです。そのため、まずは故人の遺言書があるかどうか探してみましょう。
一般的に、遺言書は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つが多く使われています。それぞれのメリット、デメリットは以下の表の通りです。
自筆証書遺言
メリット |
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メリット |
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公正証書遺言
メリット |
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メリット |
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遺言書があることで、もめることを防いだり、手続きが簡便になったりします。しかし、遺言書を残したことで逆にもめてしまうこともあります。遺言書をお考えの方は、一度専門家へのご相談をオススメします。
Q6
お金持ちの話でしょ?
A6
相続でもめているのは、お金持ちの方だけだと思っていませんか?実はそうではないんです。
相続財産が5000万円以下の人たちのほうが、もめている件数は多くなっています。「揉め事になるような財産はないから大丈夫」、「うちは仲が良いからもめない」と思っている家庭こそトラブルに発展しやすいです。現金はあまりもっていなくても、自宅不動産などは数百万~数千万円の価格になりますし、簡単に分けることが出来ないため、平等に分けることも難しくなります。数百万といえど大金ですから、目の前に大金があると分かれば、人の心理は変わってきてしまうことも当然あります。そうしたささいなことをきっかけにして、兄弟間に亀裂が入り、調停や裁判へと発展していってしまうことも珍しくありません。争いごとになると、時間や手間もかかり、精神的にもつらい状態が続きます。事前に対策をしておくことで、トラブルを回避することもできますので、一度今後のことをお考えいただければと思います。
Q7
相続税ってかならず納めないといけない?
A7
相続したときに、一番気になるのがこの相続税。亡くなってから10ヶ月以内に、相続した財産に応じて税金を納めなければなりません。しかし、すべての人が相続税を納めないといけないというわけではありません。基礎控除額を超える額に対して、課税されます。
相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
相続税は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、申告と納付をする必要がありますが、この控除額以下の場合には、申告する必要もありません。実際に相続税が課税されるのは、亡くなった方の4~10%ほどと言われており、多くの方は相続税がかかることはありません。 この基礎控除額を超えていたとしても、特例があったり、評価方法によって金額が増減するため、一概に相続税がかかる、かからないは試算してみないと分かりません。心配な場合は、税理士の先生に聞いていただくのがいいでしょう。
Q8
遺留分って何?
A8
遺留分という言葉を聞いたことはあるでしょうか?遺留分とは、相続人が最低限の遺産を確保するためのもので、簡単に言えば、「少しはあなたももらえる権利があります!」ということを保証するものになります。例えば公正証書遺言書で、全部の財産を長男に相続させると書いてあれば、長男がすべての財産を相続することが可能になりますが、二男が少し分けてくださいといえる権利があるということです。 これを遺留分減殺請求と言います。
この遺留分の権利がある人は、配偶者、子ども、直系尊属(両親や祖父母)で、亡くなった人の兄弟姉妹にはありません。また、勝手にもらえるわけではなく、相手に請求をしなければいけません。請求をしても、相手が応じなければ、裁判所での調停や裁判になります。
Q9
財産がいらないときはどうすれば?
A9
相続人全員で話し合って、一人が全部相続したり、自分はいらないということはもちろん可能です。ですので、もしプラスもマイナスの財産すべてがいらないということであれば、協議した内容に納得したという意思を残しておくために、遺産分割協議書に印鑑を押すことが良いでしょう。
しかし、亡くなった方が多額の借金をしている場合など、マイナスの財産が多い場合、相続した人たちがその借金を返済しなければなりません。自宅だけ相続するという都合のいいことはできません。相続をする際は、まず相続するかどうかを決める必要があります。もし放棄する場合は、亡くなった方が最後に住んでいた住所地にある「家庭裁判所」へ、相続があることを知った日の翌日から、3ヶ月以内に相続放棄の申立をしなければなりません。放棄した場合、放棄した相続人は当然相続人ではなくなります。そのため、次の順位の人へ相続権が移ります。借金などで家族全員が放棄した場合、亡くなった人のご兄弟が相続人になります。そのため、ご兄弟も放棄をしておく必要がありますので、ご注意ください。
Q10
もし分け方でもめてしまったら?
A10
話し合いをした結果、話がまとまらずにもめてしまった場合、手続きはストップしてしまいます。そのままにしておくというのもひとつの選択肢としてはありますが、相続財産には一切手をつけることは出来ません。このような場合、次のステップとしては「調停」があります。これは家庭裁判所に話し合いの場所を移して、もう一度話し合いを行うというものです。今度は裁判所の中で話をしますので、多少冷静な話し合いができますし、調停委員という仲介人が間に入ります。また話し合いは直接するのではなく、調停委員に言い分を伝えます。それぞれの言い分を聞きながら、中立な立場からアドバイスをしてもらえます。話がまとまれば、相続の手続きができるようになります。
それでもまとまらない場合は、家庭裁判所に申立をし、どのように相続するのかを決定してもらいます。この場合、基本的に法定相続分で分けられることになります。できればこうならないためにも、今のうちからできることを始めてみましょう!